電子印鑑とはPCやスマホ、タブレット上で利用する印鑑です。デジタル式の印鑑と考えていただいてかまいません。PDFや Word、Excelで作成したデータに直接押印が可能です。プリンタに印刷して、直接実印を利用する必要がありません。また電子印鑑はデジタルデータとして保存されているため、実印のように紛失してしまうなどのデメリットもなくなります。デジタル社会に合わせた「印鑑」が電子印鑑です。
実印の代わりとして幅広く利用されているのが、「電子印鑑」です。実際には実印と「効力の差」が存在します。どうしてそのようなことが起こるのか、具体的に解説していきましょう。
電子印鑑はここ数十年で開発されたシステムであります。古くから契約のサインとして利用してきた、「実印」とは明らかに歴史が違います。そうした背景から「本来の契約書」としての効力は弱く、場合によっては「契約書として成り立たない」場合もあるのです。しかしネット社会の発展によって、現在はそうした問題も解決へと向かいはじめています。※現段階では実印よりも信頼性で劣っているとされています。
●だれが押したのか把握しにくい
実印の場合は「相手と向かい合わせ」の状況で押印するため、「だれがどこで」実印を押したかが明確になるのです。一方電子印鑑の場合はPC上で押印が可能なため、実際に押すところを確認できません。情報さえ知っていれば、別の人間でも電子印鑑を利用できる可能性もあります。信憑性にかけてしまうのです。
●ペーパーレス化が進んでいない
海外企業では当たり前に進んでいるペーパーレス化ですが、先進国の日本ではまだまだ浸透しきれていません。そのため電子印鑑による契約のサインを、受け付けてくれない場合があります。契約書のペーパーレス化や電子印鑑が義務化されない限りは、電子印鑑の存在が強くなることは少ないといえるでしょう。※2020年度より、法人税の電子申告が義務化されました。今後電子印鑑を利用する機会は、増えることになりそうです(資本金1億円以上の企業)。
実際のところ、現時点で電子印鑑の効力は「認印」程度しかないのです。本契約に利用できる機会はまれといえます。印鑑を利用して契約すると方式は日本独自のものです。今後海外のビジネス方式に従い、「氏名」での契約方法に変わる可能性もあります。そういった意味で、電子印鑑の今後は未知数といえるでしょう。
電子印鑑を作成には「自作する」「無料ツールを利用する」や、また「有料ツールを使用する」方法があります。それぞれに特徴があるのです。「どういった場面で使用するのか」を想定して作成する必要性があります。
自作や無料ツールを使った印鑑の特徴は、「初期費用がかからない」ことと、「手軽に作成できる」ことが特徴です。PCとスマホ・プリンタ(スキャナ)などがあれば、特別な知識がなくても作れてしまいます。「いますぐほしい」という場合におすすめです。ただし自身でスキャンした画像データなので、確認した相手がコピーしてしまえば簡単に悪用できるというデメリットがあります。
また電子印鑑データから「実印を作ってしまう」ことも可能です。場合によっては実印を利用した、詐欺被害に遭遇する可能性も高くなります。自作で作る電子印鑑には、メリットと引き換えに大きなデメリットも存在していることを認識しておきましょう。※個人で作成する場合には、電子印鑑を悪用されないためのセキュリティを、別途用意する必要性があります。
すべてのツールに当てはまるわけではありませんが、有料ツールのなかには悪用されないための高度なセキュリティシステムを導入しているものもあります。自作・無料ツールで作成する電子印鑑に比べて、安全です。
また有料ツールであれば、「電子署名」(法的に効力のある署名)機能の追加も可能であります。電子印鑑としての効力も高まるでしょう。作成に費用がかかってしまうというデメリットがありますが、PCなどに詳しくなくても作れます。安全な電子印鑑を作るなら、こちらがおすすめでしょう。
PCとスマホ・またはスキャナ(複合プリンタ)などがあれば、特別な方法を利用せずに電子印鑑を作れます。おすすめは、Windowsに標準搭載されている「ペイント」と、Microsoft Excelを利用する方法です(Excelはフリー版でもOK)。
1. スマホやスキャナで読み込んだデータをPCに取り込み、「ペイント」で透過したい部分を色で塗りつぶします(緑などがおすすめ)。
2. 塗りつぶした画像を Excelで開き、「透過作業」を行って完成です(透過作業については別途ご確認ください)。
この方法を使えば最小限の費用とある程度のスキルで、簡単に電子印鑑を作成可能です。
Macの場合でも特別な費用をかけることなく、電子印鑑を作成可能です。ここでは標準搭載されている「keynote」を利用して電子印鑑を作成します。
1. スマホ・スキャナで撮った画像を取り込みます(iPhoneならiCloudで撮った瞬間に取り込み可能)。
2. keynoteで「透過作業」を行えば完成です(透過作業方法についてはネットを参照ください)。
この方法でもWindowsと同様に、コストをかけずに電子印鑑を作れます。
日本郵政グループが提供する、スマホ限定オンラインサービスです。スマホのみで電子印鑑を簡単に作成できます。以前は年賀状スタンプ作成ツールだったものの、電子印鑑を作れる機能を追加して現在のバージョンになっています。無料で信頼できるサービスから電子印鑑を作成したいのであれば、こちらがおすすめとなります。
公式サイト(スマホ限定):https://nenga.yu-bin.jp/hanko_enter/
エクセルに「電子印鑑作成機能」を追加するアドオンです。Microsoft Officeのエクセルを利用している場合は導入できます。エクセルの機能の一部として使えるため、右クリックのメニューに「エクセル電信印鑑」から使えます。注意点としては、お使いのエクセルバージョンとこのツールのバージョンに気をつけることがあるでしょう。また場合によっては動作が遅くなる可能性もあるため、環境によっては利用できないことです。
ダウンロード先:https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/excelstamp/
有料ツールである「パパッと電子印鑑Pro」の、機能限定版です。フリーソフトであるが故にできることは限られています。しかし電子印鑑を作成するには、十分な機能が搭載されています。認印・角印・ユーザー印など、さまざまな印鑑形式に対応しており、通常使いにはまったく問題ありません。また印鑑作成後に印面を調整できるなど、フリーソフトのなかでも抜群の使い勝手をもっています。
ダウンロード先:https://shop-ging.net/shop/useful/パパッと電子印鑑free(無料)/
ワード、エクセルで作成した書類に直接押印できるフリーソフトです。丸印・各印・三文判などの形式に対応しており、日付の入った印鑑も作成できます。仕事などで利用する際に便利です。
ダウンロード先:https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/clipstamp/
サブスクリプションを導入している、オンライン有料サービスです。個人で利用する場合には、1人につき月額110円で電子印鑑を利用が可能です。また有料オプションによって、電子署名・IPアドレス制限・SAML認証といったセキュリティ機能を強化できます。不正コピーや悪用を防止したい人におすすめです。またこちらにはビジネスモデルもあり、企業で利用するための豊富なサービスも取り揃えています。
公式サイト:https://dstmp.shachihata.co.jp/products/cloud/
今回は電子印鑑の作成方法と、おすすめツールについてご紹介いたしました。無料ツールは多くあるものの、いずれの場合もセキュリティ面では有料サービスに劣っています。注意する必要があるでしょう。小規模であれば問題ありません。しかし重要な契約や仕事として利用する場合は、セキュリティ面も考慮して有料サービスを検討する方がよいかもしれません。